中部支部長 挨拶

 公益社団法人日本都市計画学会は、都市計画及び地方計画に関する科学技術の研究発展を図るために1951(昭和26)年に設立され、現在に至るまで70年間の歴史を持つ学会です。中部支部は、本学会の初めての支部として1990(平成2)年に設立され、主な活動範囲は北陸地方(富山県・石川県・福井県)と東海地方(岐阜県・静岡県・愛知県・三重県)であり、首都圏と近畿圏にはさまれた広大なエリアとなっています。この地方は、日本海側と太平洋側、そして内陸側を包括し、多様な風土・歴史・経済・社会条件を持つ個性豊かな都市群から構成されているのが特徴であり、都市計画の解が唯一ではないことを物語っています。 

 2020(令和2)年度には中部支部設立30周年を迎え、様々な記念行事を実施するとともに、『変革社会に対応する新しい都市像 −動き始めた「コンパクト・プラス・ネットワーク」型都市への取り組み−』(中日出版)と題した専門書を刊行しました。この専門書は中部支部の会員と行政担当者が執筆者となり、様々な視点から中部地方における未来の都市像を展望していますので、ぜひご一読頂ければ幸いです。

 現在の日本をとりまく社会環境の変化は大変目まぐるしいものがございます。経済活動のあり方、日常の暮らし方に大きな影響を与えたコロナ禍の日々、平和な毎日が当たり前であった日本人に改めてその有り難さと安全保障の現実をつきつけたウクライナ危機、グローバリズムから米中対立による分断世界への急展開と、驚くような変わりように接しています。DXやAIといった新しい技術の急速な普及がある一方で、結局コロナ禍でも変わらなかった東京一極集中による地方の疲弊、南海トラフ巨大地震等への備えといった待ったなしの課題にも接しています。

 こうした中、今改めて認識されるのは、都市計画は、生活や活動空間の創造や改良を通じて、社会に貢献しうる大きなソフトパワーだということです。都市計画の枠組みが広がり、他の計画との関連が増すにつれ、年々都市計画の影響力は拡大する方向にあります。このソフトパワーを最大化するためには、単に計画技術を発揮してトップダウン的に社会に貢献するというだけではなく、参加や意見表明、決定プロセスの機会を大切にし、ともに学びともに都市空間をつくっていくボトムアップ的な姿勢が大切だと感じています。また、都市計画の理念がますます重要になってきていると感じています。若輩ですが、引き続き積極的な中部支部による活動を通じ、会員のみならず広く地域社会に成果を還元できるよう尽力したいと考えています。中部支部の活動をより一層活性化させていくために、多くの皆様のご協力を頂ければ幸いにございます。

中部支部長 浅野 純一郎