刊行

都市計画291号
[緊急特集]東日本大震災

 本特集は当初,『都市の脆弱性』として企画したものである。しかし,3月11日に発生した東日本大震災を受けて,脆弱性の考え方をより大きな枠組みで捉え直すことで再構成したものである。

 2011年3月11日14時46分に発生したマグニチュード9.0の大地震は,大きな津波を伴い,東日本一帯に大きな被害をもたらしました。死者は1万5千人を超え,未だに9千人弱の行方不明者が残されています。お亡くなりになられた皆様,被災された皆様,未だに避難所で不自由な生活を送られている皆様に,心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 本会では,発災後直ちに特別委員会の設立を決定,準備会を立ち上げました。また,同時に会員の皆様に提言をお願いしたところ73件ものご提案を頂きました。これらを受けて,4月22日に特別委員会の検討内容と体制の骨格を理事会決定致しました。

 また,3月27日から4月6日にかけて土木学会・地盤工学会と共同して第一次の現地調査を行い,加えて4月29日から5月7日にかけて,再び土木学会と協調して東日本地域基盤再建調査団(第2次の調査団)を派遣,同時に特別委員会のコアメンバーが被災地を縦走して被災状況を総合的に把握したところです。こうした一連の動きは5月27日に開催した緊急報告会でも報告を致しました。

 一方、被災1ヶ月を経て,政府は東日本大震災復興構想会議を設立,「東日本大震災による被災地域の復興に向けた指針策定のための復興構想について」を諮問しています。岩手県,宮城県,福島県でも復興に向けた取り組みが始まりました。この間,建設関連7学会長連名で政府に対し共同アピール並びに共同提言を行った他,建築関連団体災害対策連絡会,日本学術会議などを通じて社会的発信に努めてまいりました。

 さらに、事業委員会は5月9日より連続まちづくり懇話会を計8回開催,復興計画を立案する上で必要となると思われる関連領域の専門家のお話を伺ったところです。大変お忙しい中ご協力を頂いた皆様には,この場を借りて厚く御礼を申し上げたいと思います。

 なお,韓国,台湾,中国,香港など海外の都市計画団体からもお見舞い(韓国KPAからは100万円を超える義援金も寄せられました)を頂きましたので,被災してから1か月目、世界各地の都市計画団体に向けて,会長名で御礼のメイルをお届け致しました。

 今後は様々な組織が一体となって,被災地各都市の復興計画の立案とその早期実現に向かって進んでゆくことになりますが,引き続き会員の皆様とともに,出来る限りの協力・支援を続けたいと考えている所です。

 本特集号が,一日も早い地域の復興のために,少しでもお役に立てれば幸甚です。

(岸井 隆幸)

目次

巻頭言

東日本大震災 緊急特集号に寄せて
 岸井 隆幸


学会としての取組み

日本都市計画学会 第1次調査団報告
 岸井 隆幸・糸井川 栄一・羽藤 英二

防災・復興問題研究特別委員会の設置について
 防災・復興問題研究特別委員会

[4学会長緊急座談会] 分野横断型のグランドビジョンを議論する
 阪田 憲次・佐藤 滋・武内 和彦・岸井 隆幸


被災地からの報告

東日本大震災 被害状況と復旧・復興の動き
 中村 仁・樋野 公宏

東北支部の活動 学術合同調査委員会と第1回報告会について
 相羽 康郎

都市復興計画づくりの初動期における取組みと課題に関する報告
 山口 邦雄

宮城県における復興に向けた動き
 鈴木 孝男

被災地で探る復興への一歩
 相羽 康郎・宮田 裕介

岩沼市(仙台平野南部)の復興計画策定の実態報告:愛と希望の復興
 石川 幹子

[東北支部緊急座談会] 東北の再生と計画技術支援
 相羽 康郎・姥浦 道生・奥村 誠・北原 啓司・鈴木 孝男・鈴木 浩・増田 聡・南 正昭・山口 邦雄・宮田 裕介


過去の津波被災地の復興から学ぶ

三陸の過去の津波災害と復興計画
 中島 直人・田中 暁子

北海道南西沖地震における奥尻島の復興
 南 慎一

POKMAS,T-Shelterから発想すること ─インドネシアにおける巨大地震からの住宅再建スキームから考える─
 市古 太郎


論説・提言

国家戦略としての二元復興による国土復興グランドデザイン ─東日本の災害復興と首都圏・西日本の事前復興による国土復興シナリオ─
 中林 一樹

土地利用規制と東日本大震災
 姥浦 道生

「限界集落」を「無限集落」へ ─東日本大震災被災漁村の復興をめざして─
 坂井 淳

臨海型都市における公園緑地系統計画とデザインに関する考察
 阿部 伸太

東日本大震災からの住居の復旧過程 ─2ヶ月経過時点の記録─
 佐藤 慶一

東日本大震災と「福祉」に関する論考
 園田 眞理子

東日本大震災による交通システムの機能障害の発生状況と復旧について
 金子 雄一郎・兵藤 哲朗

市民を兵糧攻めから守る「災害のロジスティクス計画」
 苦瀬 博仁・矢野 裕児

情報プラットフォームと復旧・復興支援情報
 西澤 明

復興まちづくり支援のネットワークとガバナンス
 饗庭 伸

国土・広域的な視点からみた復興まちづくりのあり方
 瀬田 史彦

[座談会]これからの復興計画,復興まちづくり
 近藤 民代・澤田 雅浩・加藤 孝明


学会に寄せられた復興・支援への提言

自治体の職権による所有者不明土地の権利再編
 澤村 明

環境都市(エコタウン)実現に向けた中長期的目標と拠点連携型復興
 松橋 啓介

居住者主体の復興への住教育 ~住まい手の力を信じる住居学の3つの視点~
 薬袋 奈美子

未経験の超広域・巨大災害からの復興への視座
 加藤 孝明

自立的地域圏形成と復興再生ガバナンスの構築
 城所 哲夫・小泉 秀樹・加藤 孝明・早田 宰

「仮設市街地・集落」づくりからの復興を!
 濱田 甚三郎

市街化(居住)禁止区域と震災復興土地区画整理特例法の制定
 中澤 省一郎

創造的復興と自立・持続的都市・地域づくりを支える地域事業体の構築
 小澤 一郎

復興計画のビジョンに,交通からの発想を
 原田 昇

復興の主体と基本スキーム(国と地域の役割分担)
 鈴木 俊治

「仮設住宅地カーシェアリング」を起点とした復興まちづくり
 谷下 雅義・高鍋 剛・山本 俊哉

歴史文化を生かし,ふるさとを感じ,生業を生み出す震災復興へ
 鈴木 伸治・山本 玲子・三浦 卓也・池ノ上 真一・松井 大輔

3.11を経験して都市計画が変わるということ
 打林 國雄・谷口 知史

持続的社会形成のための木造復興住宅建設システム
 岩田 司


学会ニュース


編集後記