刊行

都市計画297号
都市計画はアートか?

 日本や世界の経済混迷や低成長に各地での災害が重なる今,社会のしくみ全体の見直しが待ったなしで求められている。

 近年,まちづくりの場にアート活動が組み込まれる例が増えている。1980年代までは,まち中のアートといえば屋外彫刻や環境芸術と呼ばれるパブリックアートが主体であったが,1990年代以降,地域づくりのプロセスの中で住民・行政・事業者等各主体の関係性の再構築,社会実験,地域の価値再発見が不可欠になっており,アートがより根本的なプログラムづくりから作用している。このことは,都市計画の複合化,総合化の一面として今後さらに検証,開拓していく意義があるだろう。

 本特集ではその前提として,工学技術の一分野とされてきた都市計画自体が,arts(本来的な意味で「人が手で身の回りのものをつくること」,同じ語源を持つ「技術」と「芸術」を内包する営為)と再定義するところからはじめたい。近代都市計画のシステム再構築が模索されている今,都市計画の側でもアート(arts)を都市計画自体のあり方を見直す枠組みとして,再考してみてはどうだろうか。

目次

地図の中の風景

パーソナル・ランド・スケープ;イル・ド・フランスの脆弱性を可視化する
 磯辺 行久


私が出会ったまち

バルセロナ(スペイン) ─街路へのあこがれ─
 岡部 明子


巻頭言

都市計画はアートか?
 鳴海 邦碩


特集論文

文化政策と都市計画との関係を再考する
 鈴木 伸治

フランスに於ける都市計画と都市計画家像の歴史的定義
 鳥海 基樹

「都市計画」と「都市」との縁 ─石川栄耀に見る都市計画家像─
 中島 直人

モノから都市計画まで ~関係性を形にする環境デザインの視点から
 清水 泰博

これから求められる都市プランナーとは?
 高鍋 剛

領域の変化からみた「都市をつくる仕事」の可能性と展望
 武田 重昭・穂苅 耕介・片岡 由香

現代社会と共謀するアート
 吉本 光宏

メセナの動向に見る,企業と地域,アートのかかわり
 荻原 康子

[特集対談]あなたはこのまちで誰と何をしたいですか? ~楽しい作業/行為がコミュニティをつくる~
 藤 浩志×山崎 亮

水都大阪の再生とアート
 橋爪 紳也

クリエイティブシティ・ヨコハマ ~文化芸術による横浜都心部活性化~
 秋元 康幸

都市とアートのあいだの公共的価値をめぐって ─登戸でのアートプロジェクトなどから見えてきたもの─
 田中 友章

向島のアートプロジェクトと〈モクミツの遺伝子〉
 曽我 高明

金沢における市民が取り組むアートとまちづくり クリエイティブツーリズム,チャリdeアート,町家共同アトリエの取り組み
 坂本 英之・水野 雅男

アートプロジェクトと「まちづくり」 別府からのレッスン
 牧田 正裕

芸術がまちの記憶をつくる
 五十嵐 太郎

編集後記:「都市計画はアートか?」の問いのあとに
 椎原 晶子


都市計画トピックス

市民による防犯まちづくりとアート 愛媛県松山市「福音公園」の事例研究
 仙波 英徳

NPO法人尾道空き家再生プロジェクト ~尾道市中心部斜面市街地での空き家再生と空き家バンク~
 新田 悟朗


東日本大震災復旧・復興の動き

東日本大震災被災文化財復旧支援活動に関して
 稲垣 光彦


書籍探訪・新刊レビュー|情報委員会


大会へ行こう

弘前からの招待状②
 北原 啓司


都市計画を学ぶ

大阪府立大学大学院生命環境科学研究科緑地環境科学専攻 緑地計画学研究室


海外特派員だより

ベルギーにおけるターミナル駅整備
 丹羽 健治

モンゴル国ウランバートル市における都市交通の近年の動きと市民活動の新しい方向性
 ナヤンバートル・アマルジャルガル


私の見た日本

スモール・イズ・ビューティフル
 ティトゥス・スプリー


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