刊行

都市計画303号
縮小社会における都市再編の手法~コンパクトシティは実現可能か?

 人口減少や高齢化の進展等の我が国の都市を取り巻く状況の中,いわゆるコンパクトシティ構想が目指すべき方向性として確立されているものの,その実現に向けた手法に関する議論や研究は余り進んでいない。そこで,本特集では「コンパクトシティ実現のため,市街地中心部の空間を再構成するとともに,市街地周縁部の非コンパクトな区域の空間をも同時進行的に再構成すること」を「都市再編」と定義し,中心部のみならず周縁部も含めた都市再編の実現に向けた手法(規制誘導方策,事業方策等)を中心に紹介する。

 論文は全部で13本あり,まず大野がコンパクトシティ実現に係る様々な問題提起を行い,中出,奥田が制度・施策の変遷を概括している。続けて,海道,脇坂,早坂,栗原らによる国内各都市における先駆的な都市再編の取り組みの紹介や都市スケールでの再編のケーススタディが,更には,秋田,横張,野嶋,野澤による市街地周縁部の都市再編をコントロールする手法の提案等が,そして最後に松本,岡部による海外都市における事例紹介や我が国における施策提案がそれぞれなされている。

 本特集がコンパクトシティの実現に向けた議論をこれから深めるためのきっかけとなれば幸いである。

(編集担当:大山 雄二郎)

目次

地図の中の風景

計画都市カールスルーエ
 大村 謙二郎


私が出会ったまち

港区麻布十番
 韓 亜由美


特集論文

都市文化の創造としての都市ビジョン ―実現可能な都市形態としてのコンパクトシティの課題
 大野 秀敏

郊外・周縁部の土地利用制度の変遷
 中出 文平

コンパクトシティに対応した今後の施策の方向性について
 奥田 謁夫

名古屋・駅そば生活圏構想と実現への道
 海道 清信

青森市のコンパクトシティ政策
 脇坂 隆一

空き家所有者の民意を資源とした空き家,空き地の集約化によるまちなか居住の再編 ~ランド・バンク事業(小規模連鎖型区画再編事業)手法の開発~
 早坂 進

都市を縮小するための都市再編手法の検討 ―まちづくり会社による土地の証券化等の手法の提案とケーススタディ
 栗原 徹・和田 夏子・松宮 綾子

非集約化エリアにおける土地利用の方向性
 秋田 典子

都市の縮小と新たな農
 横張 真

田園の暮らしから考える地方都市周縁部のまちづくり
 野嶋 慎二

アーバンフリンジにおける開発許可制度の課題と展望 ―市街化調整区域における立地基準を中心に―
 野澤 千絵

空き地・空き家を、ホンモノの「空き」にする
 岡部 明子

コンパクトシティは何のため? 海外実例から学ぶ政策目的と実現手法の多様性
 松本 忠


都市計画トピックス

「飯田市再生可能エネルギーの導入による持続可能な地域づくりに関する条例」の概要と制定の背景
 田中 克己・長谷川 隆三


書籍探訪・新刊レビュー|情報委員会


大会へ行こう

カバンの中にはPC,名刺入れ,デジカメ,そして…
 高見 公雄


都市計画を学ぶ

横浜国立大学 大学院都市イノベーション研究院 都市計画研究室


私の見た日本

土地所有と都市計画システム
 沈 振江


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公益社団法人日本都市計画学会 第2回定時総会(社員総会)議事録


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