インクルーシブなまちづくり

都市計画309号
景観法10年

 2014年6月,我が国に景観法が成立して満10年となる。

 学会誌では,法施行直後の2005年2月に,特集「展望 景観法-可能性と課題」(253巻)において景観法をと りあげて議論した。そこでは,国土交通省・農林水産省・環境省・文化庁の共管による我が国初めての景観に関する 総合的な法律の誕生,景観法制定と緑関係法の改正による効果,政策間連携及び事業間連携の期待,条例から法 による景観計画の強化,地方分権の推進などに言及された。「国土形成にかかわる政策としての歩みが期待されてい る」との記述も見られ,景観法に対する期待の大きさが伺える。

 景観法成立から10年が経過した現在,598の景観行政団体が誕生し,399団体で法定の景観計画が立案されて いる(2014年9月30日時点)。この数字から「景観行政」が多くの地方公共団体に浸透・普及したと捉えられる。さま ざまな地方公共団体で,その場に応じた景観施策の工夫がなされていることは,この10年になされた多くの事例報告 から明らかである。その一方で,景観法の運用に伴って顕在化した景観まちづくりにおける課題も指摘されている。

 本特集では,まず景観法成立以降の10年を振り返って景観法の実績を検証する。次に,景観計画運用の最前線の 状況や課題を紹介した上で,国際的視点から景観政策の展開について議論する。本特集が景観行政の意義や課題を 再確認し,今後の地域における景観まちづくり推進の一助となれば幸いである。

(担当編集委員:入江彰昭・福井恒明)

特集目次

景観法の実績と検証

景観法成立以降の景観行政の歩み
 舟引 敏明
景観法が示すプランニングの可能性
 小浦 久子
景観法10 年の動きと美活同源の地域づくり
 蓑茂 寿太郎
景観法がてらしだした社会と景観まちづくりの未来
 佐々木 葉

景観計画運用の最前線

景観法を活用したデザインレビューの課題と可能性~府中市と渋谷区での活用事例について~
 田中 友章
景観計画と高さ制限
 大澤 昭彦
時を超え光り輝く京都の景観づくり~進化する景観政策~
 門川 信一郎
青梅市における公共事業のデザインコントロール
 榎本 雅弘・小口 格・奥富 哲夫

景観計画の国際的展開

韓国景観法の解説
 李 政炯
台湾景観法の審議経緯と台北市景観づくり事業の現状
 王 新衡
アジア都市景観賞にみる景観政策の方向性
 坂井 猛
欧州ランドスケープ条約から考える未来
 宮脇 勝
景観関連文献2004-2013
 法政大学景観研究室
編集後記
 入江 彰昭・福井 恒明