アーツ千代田3331

都市計画314号
都市のリジェネレーション
-地域文化資源の発見・保存・再生をつなぐ

 人口減少時代,空き家や空きビル,低利用公共施設などのストックの再利用,活性化に向けて先進的に取組む民間事業も増え,国や各自治体も都市再生策を進めている。また,阪神淡路大震災や東日本大震災以降,市街地における防火耐震性能を高める都市整備も緊急に進められている。しかし急速な都市再生・防災対策の中で,地域共有の記憶,気持ちの拠り処となる地域文化資源が充分に守り活かされないまま整備が進む恐れも高い。

 都市の歴史的文脈を物語る路地や通り,建物,界隈,祭礼や生活作法等の歴史文化資源は,地域の自立的経済やコミュニティを育むに欠かせない都市インフラである。各地で歴史文化資源の保存活用をまちの活力再興,エリアマネジメントと重ねて進める取り組みが求められている。

 近年,地域の文脈を継承するための都市整備の技術や制度事業も多々開拓されている。各地の景観行政の高まりから2004年に景観法が成立し,また「文化的景観」が文化財保護法の保護対象となり,2008年の「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(歴史まちづくり法)」の制定は,歴史文化資源の活用を促進する原動力となってきた。

 歴史に立脚した都市環境のサスティナビリティをどのように育むことができるのか。

 本特集では,地域文化資源を単に過去の産物ではなく,現存しているモノや生活文化,環境のすべてが,歴史を有している資源,すなわち歴史文化資源として捉えている。その上で,これまで歴史まちづくりに取り組んできた様々な事例に学び,大都市でも地方でも,地域文化資源の本質的な特性を活かしたまちを次々世代まで渡していける方法を考えたい。

(担当編集委員:椎原 晶子・是澤 紀子)

特集目次

歴史まちづくり年表

巻頭対談

地域文化資源の利活用、地域価値創造における都市計画の役割と展望
 後藤 治×清水 義次

資源を活かす構想・政策

地域文化資源の保全・活用施策の変遷
 吉田 宗人
京都市の景観・文化資産の保全・再生・創出のための取組
 文山 達昭・門川 信一郎・奥山 陽二
東京文化資源区(Central Tokyo North)構想
 吉見 俊哉

歴史的建築物の保存・活用に向けた新しい制度・ルールづくり-国家戦略特区への提案からの動向-  西本 千尋・中島 宏典・山本 玲子

資源を活かす評価と手法

脇町の町屋にみる意匠の更新と洗練-伝統的街並の動態に関する試論
 齋藤 潮
重層的に制度を活用した真壁の歴史まちづくり
 藤川 昌樹
保存と再生を支える人づくり-ヘリテージマネージャと歴史まちづくり:兵庫県の事例
 村上 裕道

歴史まちづくりにおける文化資源の価値と保存再生
 是澤 紀子

エリアとしての資源再生

建築ストックの再生とまちづくり
 松村 秀一
リノベーションとコンパクトシティ-山形県鶴岡市における三つのリノベーション
 饗庭 伸
エリアマネジメントによる地域資源を活かしたまちづくり-篠山の空き家活用プロジェクトと地域再生戦略
 金野 幸雄

暮らしの地域資源と都市再生

記憶の価値からはじまる空間計画-岩手県大槌町における風景の再生に向けて
 窪田 亜矢

密集市街地における路地文化保全再生の可能性-神戸市長田区駒ヶ林地区での試み
 松原 永季

ふるさとになれるまち
~職住エリアと地域文化資源の総合的再生:東京、谷中界隈における取組みとヴィジョン
 椎原 晶子
都市のリジェネレーションと緑のストック
 入江 彰昭
編集後記
 是澤 紀子・椎原 晶子