大産業空間

都市計画316号
活力ある超高齢社会を共創するプランニング

 わが国は急速な超高齢化が全国的に進展しており,2030年には,高齢者が人口の3分の1を占める。「超高齢社会に備える」という趣旨の特集は,これまで医療・福祉の観点から,虚弱化・貧困などの課題を抱えた「高齢者」のことを考える議論であった。

 しかし要支援・要介護の認定率は,現時点では高齢者の約18%程度であり,8割の高齢者は自立した暮らしをしている。また総務省の家計調査によれば,高齢者は30歳代の約4倍の世帯平均貯蓄があり,若い世代よりも時間と空間に余裕のある暮らしが可能である。わが国の高齢化率は世界一であり,高齢社会対応の都市・製品・サービスなどの開発は,今後高齢化するアジア・欧米諸国を相手とした新しいビジネス・チャンスでもある。これまでのステレオタイプな高齢社会像を根底から一掃する必要があり,「高齢者に優しい」ではなく,「活力ある超高齢社会」とタイトルに付けたのは,こういう意図がある。

 本特集の趣旨は,超高齢社会への対応から考える次世代の都市計画であり,それは20年後の都市計画を考えることに他ならない。高齢社会への対応は,歩いて暮らせる・公共交通の充実したまち,活気で賑わいのある公共空間や店舗,そしてアフォーダブルな住宅といった,これまで様々な書籍・論文で指摘されてきた理想とする日常生活空間が,具体的に必要になる。しかし大きな課題がひとつある。それは団塊の世代が後期高齢者になる2025年を目途に整備を急ぐ必要があることだ。医療・介護や見守り・生活支援を行うコミュニティの再構築といったソフトの見直しが喫緊と課題と指摘されるなか,都市計画はどのように応答して行くのか。また現行の法制度体系で実現可能なのか。

 本特集では,物的環境と社会制度,研究と実践を超えて,課題解決に取り組んで居る方々にその最先端の状況と今後に向けての課題を論じていただく。この特集を契機に,次世代の都市計画について再度議論を喚起したい。

(編集担当:後藤 純)

特集目次

総論

活力ある超高齢社会をつくる
 大方 潤一郎
超高齢社会の課題に対応する新しい試み
 東京大学高齢社会総合研究機構 次世代まちづくり研究会

超高齢社会に対応したプランニングの課題

加齢・ライフコースと生活機能や社会関係の変化
 西 真理子・新開 省二
コミュニティ活動のファシリテーション-介護予防・日常生活支援総合事業への対応を中心に
 久保 眞人

超高齢社会に対応したプランニングの課題への対応

地域密着型施設(小規模多機能型居宅介護,グループホーム)の基盤整備について
 東内 京一
大都市部のメリットを最大限活かした『都市型見守りネットワーク』構築
~おおた高齢者見守りネットワーク(愛称:みま~も)の活動~
 澤登 久雄
高齢者の身近な居場所のあり方とそれを創出する地域の力とは-世田谷区の場合
 井上 文
超高齢社会の住宅条件とその階層化
 平山 洋介

地域公共交通が支える超高齢社会:地域コミュニティがモビリティを「つくり」「守り」「育てる」
 加藤 博和

超高齢者きあに対応したプランニングに向けて

エイジフレンドリーシティと都市評価について
 狩野 恵美
超高齢社会のまちづくりのために-コミュニティ戦略型計画を目指して
 後藤 純・伊藤 夏樹・似内 遼一・堤 可奈子・小泉 秀樹・大方 潤一郎
編集後記
 後藤 純