刊行

都市計画322号
地域における「団地再生」

 高度経済成長時代に住宅供給の目的で作られた団地は,建替え時期を迎えている。これまで団地再生について,都市計画,建築,コミュニティなどの分野からさまざまに議論されてきた。平成26年度国土交通省「団地再生のあり方に関する検討会」では,団地建替えと再生を円滑に進めるための整備手法が検討され,事業制度の仕組みや課題が議論された。こうした取り組みは,団地の建替えや再開発等に拍車をかける可能性もある。一方「団地再生」は,建築の更新や住棟群の再生という意味を越え,地域とも関わりはじめている。周辺地域との関係などの視点から「地域における団地」を評価する試みも進められている。

 プロールの最前線に築かれた団地は,立地適正化計画等,地域の土地利用の再編や活性化,縮退を前にどのように捉えられるべきか?単に経済的な効率のみで団地を割り切るのではなく,最近のライフスタイルの変化や技術革新などを反映した,新たな再生への議論がなされるべきではないだろうか?また「団地再生」を都市の縮退や立地適正化の足がかりとして捉えるならば,団地が「一度開発された土地」であることも意識しなければならないだろう。団地に潜むかつての自然環境などはこれまであまり留意されてこなかったが,今後は,団地と地域の自然環境との関係や団地開発手法などの「文脈」を理解して「残すべきか,撤退すべきか」を議論・判断する必要もあるだろう。

 本特集では,多面的な議論を通じて,「団地再生」が単なる建築・構造物の再生に留まらず,都市の再構成や地域のコミュニティの再編・創出,地域の自然環境構造の再編にいかに寄与しうるか?その可能性を探ってみたい。

(編集担当:篠沢 健太)

本特集では「団地」を「一時期に開発された集合住宅群」とし,分譲賃貸の違いや低・中・高層を区別せず広範に捉えた。

目次

地図の中の風景

上新田の逆襲 ―千里ニュータウン開発の「除外地」は、今
 片寄 俊秀


支部トピックス


特集:地域における「団地再生」

【口絵】

ニュータウン・住宅団地等の開発から再生への変遷年表

【総論】

「団地」の歴史的変遷と今日の課題
 小林 秀樹

住宅団地の再生に向けた国土交通省の取組み
 岸田 里佳子

UR都市機構の団地再生の取組みと今後の展開について
 西周 健一郎

ニュータウン・住宅団地等の開発から再生への変遷
 宋 俊煥・出口 敦

【テーマ別論考】

住宅地再生の課題 ―オールド・ニュータウンと地区交通
 藤原 章正

ニュータウンにおける自然環境の構造化の系譜 ―意図と非意図の狭間で
 篠沢 健太

団地の社会学 ―住むことの社会性と団地再生の選択肢
 若林 幹夫

【事例編】

ドイツにおける団地再生と都市計画文脈
 大村 謙二郎

地域における住宅ストックの再編と「団地再生」
 小山 雄資

団地と地域環境構造 ―潜在的グリーンインフラとしての元低湿地の初期公団住宅とその土地基盤
 霜田 亮祐

千里ニュータウンの文化的文脈 ―ニュータウン計画除外地区の文脈の再解読と現代のまちづくりへの接続
 木多 道宏・下田 元毅

UR団地空間デザインと暮らしが文化を創る
 増永 理彦

団地コミュニティ(生活・空間)再編と地域再生 ―男山団地再編プロジェクトから
 江川 直樹・宮崎 篤徳

今,団地を選ぶ人の居住者像とは ―リノベーション,不動産の現場から
 吉永 健一

多摩ニュータウン学会の理念・思想と活動の歩み ―地域住民と共に考え,行動し,次世代につなぐ
 西浦 定継

【総括】

団地再生の夜明け ―再生し続ける団地を目指して
 大月 敏雄

【編集後記】
 篠沢 健太


連載 立地適正化のプラン・メイキング

鳥取市における多極ネットワーク型コンパクトシティの取り組み
 稲干 典史

花巻市の立地適正化計画について
 井元 尚充


書籍探訪・新刊レビュー|総務・企画委員会


大会へ行こう!

 志摩 憲寿


報告

学会賞・特別功労表彰・年間優秀論文賞


学会ニュース