ミレニアルズ

都市計画327号
エコな街をつくる:地区スケールの環境ガバナンス

 日本の地区スケールのまちづくりの実務とそれを支える研究は,住環境整備,景観,防災・減災,災害からの復興,商店街活性化,超高齢社会への適応,交通静穏化,水と緑等の分野別にアプローチし,当該地区の課題の解決に貢献してきた。

 地区というスケールは,素早くイノベーションを起こすのに十分な小ささと意味のある効果をもたらす十分な大きさを兼ね備え,都市や地球の持続性を加速させるのに適正な規模を持つと言われている。しかし,地球規模の気候変動や社会のレジリエンスといった世界共通の課題に,日本のまちづくりは必ずしもうまく対応できていない。目の前のミクロな課題の解決に気を取られ,それらを都市や地球のマクロな課題と結びつけていない,あるいは,目の前に大した課題がなければ,その環境をそのまま受け入れる傾向はないか。

  より高い目標を目指す地区スケールの都市再生(再開発,改善,保全を含む)を進め,前向きに,より良い社会と空間をつくる努力を続けるべきではないか。そのためには,地区スケールの都市再生の取り組みを都市や地球の共通課題に対応するように再構成し,エコな街をつくり,育てる,地区スケールの環境ガバナンスが必要である。ここでの環境ガバナンスは,地区スケールの幅広い意味での環境を管理する社会の能力や仕組みを指す。また,日本のまちづくりの歴史や現状を踏まえ,中央集権的なトップダウンのガバナンスではなく,住民,事業者,地権者,企業,大学,自治体等の多様な主体の協働による分権的なボトムアップのガバナンスを想定する。

 本特集では,その枠組みを探究することを目的に,都市計画関連分野の研究や実務をレビューする。

(担当編集:村山 顕人)

特集目次

導入

エコな街をつくる新しい枠組みの探究-本特集の背景と見取り図
 村山 顕人

地球規模の気候変動へのマルチスケールの応答

パリ協定以降の気候変動ガバナンス
 松下 和夫

日本の環境都市政策の変遷とモデル
 和泉 洋人

低炭素都市なごや戦略実行計画と低炭素で魅力あるまちづくりへの挑戦
-未来に出会うまち~共に創る「低炭素モデル地区」~
 足立 純一, 宮口 博孝

良い地球環境を実現するための個の取組みと地区レベルの応援-いくつかの実践から
 小林 光

グリーンイノベーションの場としての街,先進事例の役割

サステイナビリティに向けたイノベーション-ステークホルダー連携と社会実験
 鎗目 雅

Livable City(住みやすい都市)をつくる -グリーンインフラからのビジョンとアプローチ
 福岡 孝則

柏の葉スマートシティ(LEED-ND プラチナ認証)-「理想」の未来像を示すことがまちの価値を引き上げる
 三牧 浩也
URによる千里山団地環境配慮プロジェクト
 原澤 昌雄
新たな都市モデル構築に向けた多元的プロジェクトの統合管理
-総合特区事業を契機としたさいたま市美園地区における試み
 岡本 祐輝, 有山 信之, 堂下 和宏
大学キャンパスとサステイナビリティ-サステイナブルキャンパス創造の取り組み
 小篠 隆生
「公園のような街」の維持をめざして
 中川 清史

環境性能,持続可能性の評価の枠組みとツール

地域のレジリエンスと持続性を評価する-ツールとシステムの概観
 シャリフィ・アユーブ, 山形 与志樹

CASBEE-街区の枠組みとその適用事例
 吉澤 伸記

LEED-ND:「環境性能評価」を超えた地域のサステイナビリティ指針
 平松 宏城

エコな建物や街への投資

エコな街づくりを後押しするグリーンボンド市場の概況
 吉高 まり

DBJ Green Building認証制度と金融とのリンク-長期利用可能な不動産と長期投資家を結びつける
 飯塚 洋史

編集後記
 村山 顕人