刊行

都市計画343号
芸術からみる都市/都市からみる芸術

 都市は,創造の場である。人が集まり,交流が刺激となり,世界に新たな謎が見出され,芸術が生まれる。また,都市は,多様な芸術が享受できる場でもある。オペラハウスや美術館といった芸術文化施設は都市を象徴する施設であり,世界各地の都市を公演や展覧会が巡回する。都市が成熟し,物的な欲求が満たされるにつれ,ますます芸術が求められるようになる。

 このように都市と芸術とは元来強い結びつきがあるが,特に産業構造の変化に伴う都市の疲弊に対して,1980年代後半に登場した創造都市論や,1990年に開催されたグラスゴーでの欧州文化首都などを契機に,都市再生に文化が結びつけられるようになると,都市計画と芸術との接点も急速に増えていった。一方,日本では,2000年代に入って地域芸術祭が爆発的に増え,まちづくりにアーティストを招聘する例も増えた。

  しかし,都市計画に関わる私たちは,芸術のことをどのくらい理解しているのだろうか。一方的な見方によって,芸術を,景観を整える要素や賑わいを生む道具のひとつのように矮小化して捉えてしまっていないだろうか。

 本特集では,芸術の側からみた都市と,都市(計画)の側からみた芸術,という二つの視点に立つことによって,より豊かな都市と芸術との関係に向けた投げかけをしていきたい。本特集は大きく3つの部分から構成される。【芸術にとって都市とは何か】では芸術からみる都市に関する論考,【芸術文化施設と都市のかたち】では都市からみる芸術のうちハード面との関わりがある論考,【都市・地域運営と芸術】では都市からみる芸術のうち主にソフト面にフォーカスした論考を集めた。都市計画にとって芸術が身近になりつつある今だからこそ,あらためて芸術の豊かさと意味を再考する機会としていただければ幸いである。

(編集担当:伊藤 香織・福岡 孝則)

目次

地図の中の風景

都市空間を自分たちの手に取り戻す試み
 今村 創平


支部トピックス


特集:芸術からみる都市/都市からみる芸術

【芸術にとって都市とは何か】

芸術と都市
 アントニー・ゴームリー

近代以降のアートと都市 ─モニュメント的なものへの抵抗
 住友 文彦

[インタビュー]都市空間に闖入するアート作品が想像力を拡張する
 西野 達

都市はランドアートから何を学ぶか ―Earthworks and Beyond の思潮と都市計画への可能性
 三谷 徹

都市空間における野外劇の役割
 梅山 いつき

[インタビュー]観客と都市を媒介する演劇
 高山 明

【芸術文化施設と都市のかたち】

十和田市現代美術館とは何か? ─OSとデモンストレーション
 藤 浩志

文化ホールの現場で場づくりを通して地域人材を育てる
 清水 裕之

景観形成の視点からパブリックアートを考える
 鵤 心治

[インタビュー]都市デザインと芸術 ─都市と芸術の豊かな関係とは
 ジェフリー・シューメーカー

【都市・地域運営と芸術】

去勢された「創造」への危惧 ─創造都市と地域アートの功罪
 藤田 直哉

[インタビュー]欧州文化首都にみるグローバルな文化都市
 古木 修治, 貴舩 美波

芸術祭がもたらしたもの
 藪田 尚久

エリアマネジメントと「アート」 ―運河におけるアート活動とその先
 田中 大介

都市に変化を起こす文化芸術ラボラトリー M-Pavilionの展開
 福岡 孝則

[インタビュー]「まち」に展開するアート ―ワタリウム美術館が想像するアートの力
 和多利 恵津子

【編集後記】
 伊藤 香織・福岡 孝則


都市計画トピックス

東日本大震災の教訓に学ぶ ~防災意識社会への転換に向けて~
 西尾 崇, 松本 章

産学官民の連携による震災の教訓の伝承 ―動き出した「3.11 伝承ロード推進機構」
 原田 吉信


まちづくりマインドを育む

高校での地理総合必修化に向けた都市計画学会の取り組み
 菊池 雅彦


書籍探訪・新刊レビュー|総務・企画委員会


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