刊行

都市計画374号
市民参加・協働によるまちづくりと地域運営のこれから

 都市計画決定や行政計画策定の検討プロセスへの「参加」,各種計画に基づく取組の推進や地域の問題解決に向けた市民・事業者・行政の「協働」による取組は,より効果的な成果をもたらす多様な方法論が構築・展開されてきた一方で,形式的・画一的な市民参加・協働により,その意義が希薄化する状況も並行して進んでいると認識している。

 こうした認識のもと,本誌286号(2010年)の特集「市民参加の到達点」から15年が経過した今,あらためて,これまでの市民参加・協働が果たしてきた役割や成果を振り返り,これからの課題とは何かを展望したい。

 また,昨今は,行政施策など既にある取組・主体に市民が参加・協働という形で関わるのではなく,市民が主体となり,居場所づくり,小商いの実践,地域資源のブランディングなどを進め,さらには,まちづくり組織(NPO,まち会社,地域商社等)を立ち上げ,自ら地域運営に取り組む事例も増えている。

 人口減少が深刻化し,そもそも地域運営の担い手がいないという問題も顕著になる中で,定住人口だけに依らずに,他都市の市民,企業・研究機関など関係人口の参画も得た体制をとるなど地域運営の形も多様化している。

 参加・協働が,地域の活動人口(地域の社会・経済活動に関心をもって継続的に関わる者)を増やす入口となり,活動人口の増加が,地域に様々なまちづくり活動を生み出していく。そんな好循環の創出が,人口減少社会における多主体連携まちづくりの充実を図るモデルの1つと想定しながら,市民参加・協働によるまちづくりと地域運営のこれからを展望したい。

(特集担当:安富 啓・後藤 智香子)

目次

地図の中の風景

人と人・人とまちをつなぐマップ
 吉川 真珠美


支部トピックス


特集:市民参加・協働によるまちづくりと地域運営のこれから

【解題】

人口減少社会における市民参加・協働,地域運営を考える─本特集の編集にあたって
 安富 啓・後藤 智香子

【市民参加・協働,地域運営のこれまでとこれから】

都市計画における市民参加のこれまでと今後
 杉崎 和久

「参加」は,市民が変容する創造的なプロセス─東京都世田谷区の1980年代前後を振り返る
 齋藤 啓子

これからの地域運営における地縁組織の役割と可能性
 玉野 和志

農村における市民参加・協働の変遷と地域運営のこれから─人口減少下での持続的な地域運営に向けて
 田口 太郎

まちづくりの構造転換 序論:参加・協働,関係そして共創へ
 小泉 秀樹

【地域課題の解決を図るテーマ型まちづくりの実践】

地域課題の解決に向けた公民連携まちづくりの課題と可能性─岩手県紫波町におけるオガールの展開,そして日詰商店街・7つの学校跡地へ
 鎌田 千市

市民参加・協働の実践を支える公的セクターのこれからの役割─練馬区におけるみどりのまちづくりセンターの活動を通じて
 公益財団法人練馬区環境まちづくり公社

こども基本法施行後の自治体施策とこども参画─オンラインプラットフォーム「こえのもりしずおか」の取り組み
 土肥 潤也

地域の建設会社が住民とともにまちをデザインする─「ドロフィーズキャンパス」による地域の活性化
 濱本 智子

【自分の視点から始まるまちづくりの実践】

まちづくり活動の担い手は,なぜ自発的に活動に取り組もうと思うのか─「中動態」及び「菌の人」に着目して
 助川 達也

「まちに関わる入口づくり」がもたらす新たなまちづくりの可能性─国立市富士見台地域の参加型まちづくりの取り組み「クラブサバーブ」
 若島 慎兵・相澤 くるみ・三澤 英和・布施 裕二

まちを舞台に「自分のやりたい」を一歩進める「ちょこまち」─北海道伊達市協働まちづくり推進事業
 和野 友香・後藤 由紀

【共創人口による地域運営】

都市計画上の課題としての地域おこし協力隊
 平井 太郎

農村地域における地域運営の転換と組織形成プロセス
 石井 旭

持続可能な地域運営における町内会・自治会のこれからの役割と可能性─函館市青柳町会の取組を通して
 鎌田 桜子

[次世代座談会]いかにして仲間を巻き込むか
 道尾 淳子×酒井 聡佑×阿部 勇士×竹口 祐二

【デジタル技術を活用した地域運営】

加古川市版Decidim(デシディム)の活用による政策立案プロセスの今後の可能性
 多田 功

持続不能なエリアマネジメントからの脱却と地域コミュニティの可能性─「管理・運用型」からデジタル活用による「共創・支援型」のエリアエンパワーメントへ
 矢野 晃平・吉澤 晶子・倉本 弥里

町内会・自治会のデジタル活用における課題と可能性
 林 和眞・近藤 早映・小野 悠

ローカルスタートアップが生み出すソーシャルインパクト─福島県楢葉町が取組む「公民連携型まちづくり」5年間の軌跡
 斉藤 隆秀

【編集後記】
 安富 啓・後藤 智香子


官民連携による公共空間の利活用を通じたウォーカブルなまちづくり

連載をふりかえって
 三浦 詩乃


書籍探訪・寄贈図書レビュー|企画調査委員会


わたしとあの街

オスロ(ノルウェー):風通しが良くて爽やかな首都,オスロ
 木藤 健二郎


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