2015年10月号の特集「使われる公共空間」(317号)から10年が経過した。当時提起された「つくる」から「つかう」へのパラダイムシフトは,歩行者利便増進道路(ほこみち)制度や Park-PFI,「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の形成に向けた施策など,具体的な法制度として結実した。公共空間を活用する実践は各地に広がり,社会実験はもはや珍しいものではなくなっている。
一方で,制度という「武器」が揃った現在,現場はより高く複雑なハードルに直面している。社会実験から常設化・事業化への移行である。日常の運営を担う人材と財源をどう確保するか,収支構造をどう組み立てるか,常設化に伴って顕在化する利害の対立をどう調整するか。「つかう」ことの是非ではなく,「つかい続ける」ための仕組みが問われる段階に入っている。
加えて,公共空間の活用には批判的な視点も向けられている。特定の利用者の排除,公共性の民間化,ジェントリフィケーションといった論点は,活用が広がった今だからこそ正面から論じる必要がある。
本特集では,2015年特集の構成を踏襲しつつ,各論点を「始動期」から「定着・展開期」へとアップデートする。公共空間で過ごす文化の醸成,活用を支える制度とマネジメント,海外都市と日本におけるデザインの到達点という3つの視点から,この10年の変遷を跡づける。そのうえで,エリア経営に不可欠な実践的マネジメント論と評価手法を展望し,次の10年に向けた議論の土台を提示することを目指す。
(特集担当:泉山 塁威・荒井 詩穂那・山崎 嵩拓)
江戸切絵図から見る現代都市
吉田 桃子
【口絵年表】 泉山 塁威・宋 俊煥
【総論:10 年の総括とパブリックスペースの再定義】
[座談会]なぜ,私たちは公共空間を活用するのか?─「稼ぐ」と「開く」のバランスと文化の醸成
馬場 正尊×伊藤 香織
[インタビュー]世界で広がるプレイスメイキングのムーブメント
イーサン・ケント
「使われる公共空間」から10年,変遷と新たなジレンマ─使われる公共空間10年史年表の読解
泉山 塁威・宋 俊煥
【第1部:公共空間で過ごすという文化の醸成】
市民協働の姫路駅前広場誕生から10年─開かれたプレイスオーナーシップへの挑戦
澤田 勝也・米谷 啓和
札幌都心部のパブリックスペースの変化─札幌駅前通地区の公共空間マネジメントの展開
内川 亜紀
POP URBANISM とパブリックスペースの文化─COMMUNE 246から10年
中村 航
シモキタ園藝部が醸成する新しいみどりの公共性─公共空間の引き際について
三島 由樹
都市空間に複数性をデザインする─シェア型緑地Comoris のインセンティブ設計とデジタル地域通貨の実践
南部 隆一
地方の小さな実践を支える運営条件─山形市における公共空間活用とコーヒーショップ
追沼 翼
【第2部:公共空間の活用を支える制度・システム】
[座談会]公共空間/パブリックスペースの10年を展望する
小川 貴裕×吉江 俊×高木 悠里
車中心から人中心への転換とマネジメントの現在地─なんば広場の空間再編と収支構造
岸本 しおり
BIDとエリアマネジメントの財源の現在地
宋 俊煥
都市開発が生んだ公共空間ストックを更新する─セミパブリックスペースの再生に向けて
景山 亮
パブリックライフ調査とEBPM(エビデンスに基づく都市政策)の最前線
小林 亜也子・関 紀和
【第3 部:公共空間のデザイン─海外都市の最前線】
ニューヨーク公共空間利用の変遷─現行ゾーニング施行65年の軌跡から向こう10年を読み解く
山﨑 清志
都市の時空間的デザインに挑むパリ─都市の近接性をめぐる大転換の10年史
吉野 和泰
公共空間の可能性─メルボルン分解考察
江川 海人
ウェルビーイングを支える北欧のパブリックスペース─市民の声と,実験から常設化への歩み
石川 太陽
【編集後記】
泉山 塁威・荒井 詩穂那・山崎 嵩拓