刊行

都市計画319号
成熟時代のオリンピック・パラリンピック大会と都市のイノベーション

 2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会については,この約1年,新国立競技場やロゴマークの問題が国民的関心事となった。また,2016年の「オリンピック・パラリンピック・イヤー」を迎え,リオデジャネイロ大会に向けた各種競技大会・選手への関心が高まると同時に,4年後の東京大会に向けた準備も加速している。

 オリンピック・パラリンピック大会という国際的スポーツイベントは,これまで,開催都市の発展に大きな影響を及ぼしてきた。日本でも,1964年 の東京大会は,戦後復興の成果を世界に示し,その後の成長時代に必要な都市基盤の整備を飛躍的に進める契機となった。では,2020年の東京大会は,成長 時代から成熟時代に入った東京,そして,人口減少・超高齢社会への適応が他の先進国に先駆けて求められる日本に,どのような影響を及ぼすのか。いや,我々 は2020年大会を契機に,どのようにその後の都市と社会を構想し,その実現に向けたイノベーションを展開すべきなのか。

 本特集は,こうした問題意識の下,都市政策,都市計画,都市デザイン,オープンスペース計画,交通計画,インフラストラクチュア,歴史,観光と いった都市計画関連分野の専門家にそれぞれの視点から論じて頂き,1964年大会を振り返り,海外事例からも学びつつ,オリンピック・パラリンピック大会 と都市のイノベーションの関係を多面的に整理し,2020年大会を成熟時代の東京の新たな展開の契機とするための可能性と課題を明らかにすることを目的と している。これが,2020年大会の個別要素の議論を超えて,成熟時代の都市と社会のあり方を真剣に検討する契機となれば幸いである。

(編集担当:村山 顕人)

目次

地図の中の風景

失われた「春の小川」と下水道計画
 田原 光泰


私が出会ったまち

オリンピック後も進化し続けるソウル市の都市交通システム
 中村 文彦


特集:成熟時代のオリンピック・パラリンピック大会と都市のイノベーション

【口絵】

オリンピック東京大会会場計画 ―1964 年と2020 年の比較

【オリンピック・パラリンピックを見る視点】

都市政策の視点からオリンピック・パラリンピックを考える ―変貌する東京の都市空間と都市力
 市川 宏雄

オープン・スペース・デザインからオリンピック・パラリンピック東京大会を考える
 片木 篤

2020 年夏季東京オリンピック・パラリンピック大会:最大の交通チャレンジ
 室町 泰徳

【オリンピック・パラリンピックの会場計画と施設整備】

東京都による選手村等施設整備について ―東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の準備状況
 安部 文洋・小野寺 弘樹・花井 徹夫

【都市計画の各関連分野から見たオリンピック・パラリンピック】

社会を変えるパラリンピック ―1964年大会が後押しする2020 年大会
 上林 功

テクストとしての明治神宮外苑 ―その歴史に精神的文脈を読む
 今泉 宜子

オリンピック・パラリンピックと緑
 輿水 肇

2020 年東京オリンピック・パラリンピックと湾岸ウォーターフロント ―東京ベイ・エリアの将来展望と世界の潮流
 中野 恒明

東京臨海地域と歴史的・文化的界隈 ―オリンピック・パラリンピック「東京ベイ・ゾーン」の地域文脈デザイン
 中島 直人

オリンピックと都市,そして観光の理解に向けて ―スポーツ観光と都市観光における学際的研究とその課題を探る
 榎戸 敬介

インフラ老朽化問題から見る2020 年五輪
 根本 祐二

【海外事例】

ロンドン・オリンピックにおけるレガシー計画の重要性
 村木 美貴

都市計画のバルセロナモデル:光と影
 岡部 明子

ソウルオリンピック競技施設配置計画とソウル都市計画用途地域における緑地地域との相関について
 朴 光賢

【編集後記】
 村山 顕人


書籍探訪・新刊レビュー|情報委員会


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