刊行

都市計画320号
地方「創生」の地方論

 他の学会誌でも地方創生についての特集が最近数多く見られる。都市計画と地方創生は親和性が高そうではあるが,しかし実のところ具体的にはどのような関係にあるか,あまり整理されていない。そんなこともあり,今回地方「創生」についての特集を企画した。ただし,「創生」とカギ括弧をつけたのは,政策に対する様々な疑問からである。いったい「創生」(英語ではrevitalization,らしい)とは各地方にとってなにを意味するのだろうか?

  また,地方創生については2014年の「増田レポート」を契機に,全く異なる立場からの議論が併存している。それを公平に見ながら,都市計画・まちづくりの分野から地方「創生」をいかに考えるかと言うことが本特集の趣旨である。

 なお,立地適正化計画については「まち・ひと・しごと創生総合戦略」中で位置付けられた,都市計画分野において重要な政策ではあるが,本特集ではそこにはあえてフォーカスしていない。今回は「創生」される地方を考えるという意味で,国土計画のこれまでの状況分析から現在の地方「創生」のあり方について示唆されること,また,東京一極集中ということへの議論と,都市・農村・郊外・交通という視点からの「創生」の論点,方法論として「創生」を考えるためのデザイン手法,そして各都市での実践とその意味について寄稿いただいた。「自治体消滅」といった衝撃に基づいて議論する地方創生では無く,冷静に実情を認識しながら,我々がこの地方「創生」というものの存在の上でなにができるのかを考えていきたい。なお,本特集では東京圏もひとつの「地方」として捉えている。

(編集担当:内田 奈芳美)

目次

地図の中の風景

南国土佐を前にして ~時空を越えた空中散歩~
 野中 勝利


支部トピックス


特集:地方「創生」の地方論

【地方「創生」のこれまでとこれから】

わが国の地方計画に関する個人史的概説と将来展望
 後藤 春彦

地方振興の変遷と地方創生政策
 瀬田 史彦

全国総合開発計画が地域にもたらしたもの ―富山県を例に
 佐野 浩祥

地方創生を日本列島改造論から考えてみる ―列島改造論に携わった小長氏へのインタビューと,列島改造論の検証から
 内田 奈芳美

【地方「創生」の論点】

地域公共交通と地方創生
 小嶋 光信

地方創生のなかの都市と農村
 山下 祐介

大都市と地方創生
 八田 達夫

東京圏の「地方」
 三浦 展

【地方「創生」のデザイン手法】

人口減少×デザイン 住民参加を促し,地方創生への気運を高めるデザインアプローチ
 筧 裕介

地域経済分析システム(RESAS:リーサス)の成果と展望 
 内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局

【地域からの「創生」と実践】

地域イニシアチブを起点とした地方創生の思考と実践への脱構築
 真野 洋介

地方都市「論」 ―福井のケース
 野嶋 慎二

氷見市・創生戦略とその実践 ―ワーク・イン・プログレスによる「まちのグランドデザイン」に向けて
 真野 洋介

子育て世代に選ばれる街づくり戦略
 井崎 義治

規制緩和による地方創生 ―国家戦略特区養父市の挑戦
 福島 徹

バイオマス産業杜市“真庭”を目指して ―地域資源を使いきる仕組みの構築を―
 森田 学

モビリティとコミュニティ維持のためのオンデマンドバス ―三重県玉城町での実験などを通して
 大和 裕幸

鯖江市体験移住事業「ゆるい移住」プロジェクト ~とりあえず住んでみて田舎のまちをゆるく体験
 法水 直樹

【編集後記】
 内田 奈芳美


連載 立地適正化のプラン・メイキング

立地適正化計画の策定を巡る論点
 村山 顕人・寺田 徹

立地適正化計画制度の活用に向けて
 鎌田 秀一


書籍探訪・新刊レビュー|情報委員会


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