刊行

都市計画339号
銀座と都市計画

 2019年は日本に都市計画法が制定されて100周年であるとともに,銀座通り・晴海通り沿道の商店会である銀座通連合会の創立100周年でもある。銀座通連合会は,前身を京新聯合会という。京橋から新橋まで,という意味の「京新」である。当時の銀座は掘割に囲まれ,京橋・新橋は地名ではなくまさしく橋そのものであった。設立の発端は都市計画法と直接の関係はないものの,法制定に伴う交通網整備や土地区画整理事業,すなわち銀座通り車道拡幅の影響を受け,増え続ける自動車交通への対応や,すでに銀座の風物詩となっていた柳やガス灯が撤去されることに対して,地元が合同して銀座の繁栄策を議論していこう,というものであった。

 銀座は,最初の近代都市計画として造られた明治煉瓦街建設をきっかけに発展し,関東大震災,第二次世界対戦による戦災を乗り越え,今なお,繁華街のトップランナーとみなされている。変化し続けてきた銀座は,2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を目前に,幾度目かの変化の時を迎えている。

 この機をとらえ,「銀座」という街を題材として,都市の魅力のありかと根源,地域ルールによる街の運営,都市の公共空間などをキイワードに,この巨大なブランドイメージを持つ街に都市計画は果たして何をしてきたのか,してこなかったのかを考察してみたいと考えた。これまで銀座まちづくりに関わってくださった方々,銀座という街にまったく言及のなかった方々双方に,今の銀座を論じていただいた。

 銀座はある意味,特別な街であるかもしれない。しかし,特別でない街などない,と思っている。<銀座>を一つの視点として,国内外の都市そのものが,歴史的に抱える課題があぶり出され,今後の都市計画の役割と可能性を再考する試みとなれば幸いである。

(編集担当:竹沢 えり子)

目次

地図の中の風景

東京初の住宅地図「東京京橋区銀座附近戸別一覧図」
 野口 孝一


支部トピックス


特集:銀座と都市計画

【巻頭言】

銀座は次代の夢を描けるか
 竹沢 えり子

【銀座とはどういう場所か】

東京のなかの銀座 都市文化の魅力のありか
 陣内 秀信

江戸を引き継ぐ銀座の都市構造を読み解く
 岡本 哲志

銀座の地元商店主による街づくり運動の系譜 ―戦前から戦後にかけて構築した議論の枠組みに注目して
 宮下 貴裕

【都市計画と銀座のルール】

都市計画法100 年と銀座の150 年
 中島 直人

銀座の街づくりに関わって
 蓑原 敬

「決めない」ことを決めたルール ―銀座デザインルールの考え方・銀座デザイン協議会で話し合っていること
 小林 博人

「銀座ルール」の20年:高度利用地区と地区計画
 大澤 昭彦

世界からみた銀座のルールとガバナンス
 有田 智一

二つの銀座ルール(地区計画等と駐車場地域ルール)―ルールの内容と今後の課題
 中央区 都市整備部都市計画課/地域整備課

【リサーチレビュー】

「語られた銀座」のクロニクル ―銀座をテーマとした都市論のレビュー
 宮下 貴裕

【変わる街路空間と交通】

銀座通りの景観整備 ―ヤナギからカツラへ
 倉田 直道

銀座の文化と公共空間 ―「場」としての街路のポテンシャルと課題
 三浦 詩乃

銀座でのモビリティ・デザインの創造
 中村 文彦

【銀座からの文化発信】

銀座が新時代の文化発信基地となるために
 芹沢 高志

銀座とラグジュアリーブランド
 三木 均

画廊街で発足した任意団体・銀座ギャラリーズ ―イベントを通して芸術文化を啓蒙
 斉藤 博美

銀座ディスプレイコンテストと未来の街並
 山田 祐照

全銀座会によるイベント
 竹沢 えり子

【銀座はどこへ行く】

[インタビュー]消費社会から考える銀座の可能性
 三浦 展

変化の時
 セオドア・言・ニフィング

[対談]銀座には「新しい都市計画」が必要だ
 吉田 不曇×中井 検裕

銀座がGinzaとなるために
 中井 検裕

【編集後記】
 竹沢 えり子


書籍探訪・新刊レビュー|総務・企画委員会


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