1987 年にブルントラント委員会により「持続可能な発展」という概念が提唱されてから30 年余り経過した現在,持続可能性は都市計画において中心的なイシューであり続けているが,持続可能性の枠組みは当時のものから大きく変化を遂げている。当初,都市計画において持続可能性を論ずる際,中心的であったのが環境問題であったが,人口減少・少子高齢化,地域経済の縮小,グローバリゼーションの進展,情報化,地球温暖化の進行,さらに感染症の世界的流行により,都市が直面し,都市計画が対峙していかなければいけない都市の持続可能性に関する危機が大きく変化してきている。それに加え,人々の価値観も大きく変容,多様化し,都市計画における持続可能性を再考・再定義する時期に来ている。
さらに,2015 年に国連によりSDGs が採択され,持続可能な開発という概念が具体的な目標,達成基準に変換された。現在,多くの個人,市民団体,企業,自治体がその活動においてSDGs における目標の達成に向けて活動を行っている。都市計画やまちづくりの分野において,各主体がどのようにこのSDGs を活用して,持続可能な都市の形成を図っていけるのか,そしてそれを期間限定の個別の活動に留まらず,長期的な視点での社会全体として持続可能な都市を実現するにはどのようにすべきか,ここで立ち止まっての検討が必要である。
このように,都市計画における持続可能性の概念が変化をして行っているのと並行して,新しい技術,分野が誕生しており,これらを活用して,都市の持続可能性を向上させることが期待できる。
そこで,本特集では,都市計画における持続可能性をどのように再定義し,持続可能な都市の形成に向けてどのように各主体取り組むべきなのか,そして新たな技術や分野をどのように活用することができるのかを検討することをその趣旨とする。
(編集担当:松行 美帆子)
GHQの液状化痕跡マップ
小長井 一男
【解題】
都市計画における持続可能性を捉え直す
松行 美帆子
【都市計画と持続可能性】
ポストコロナにおける都市の持続可能性─SDGs普及の流れの中で
谷口 守
SDGsと都市計画・まちづくり─ハード・インフラとソフト・インフラの有機的連関にむけて
佐藤 真久
【各主体によるSDGsの実践】
SDGsの成り立ちと日本の実践事例─狭義と広義の都市計画・まちづくり
藤野 純一
ローカルSDGsの実践,フォローアップとレビュー
川久保 俊
市民活動におけるSDGsへの取り組み─SDGs市民社会ネットワークの政策提言活動を通じて
新田 英理子
[インタビュー]ヨコハマSDGsデザインセンターとまちづくり─SDGs達成に向けた多様な主体の協働を目指して
信時 正人
【都市の持続可能性に関する新たな課題と試み:社会的公正】
社会的公正の都市計画
城所 哲夫
アフターコロナの「都市の「かたち」」─パンデミックとジェントリフィケーション
矢作 弘
メデジンの社会的都市政策による社会的分断の改善
志摩 憲寿
【都市の持続可能性に関する新たな課題と試み:高齢化・人口減少】
高齢化社会における社会保障制度の持続可能性
岩本 康志
人口減少時代における社会増・社会減している自治体のプロファイリングの試み
服部 圭郎
【都市の持続可能性に関する新たな課題と試み:地球温暖化と気候変動】
都市計画における気候温暖化対策
村木 美貴
水災害リスクを踏まえた防災まちづくり─個人の持続可能戦略を適切に誘導し,全体の持続可能性を高めるまちづくりとは
美濃部 雄人
葛飾区浸水対応型市街地構想─水害に強いまちを目指して
目黒 朋子
【都市の持続可能性のための新たな考え方・分野・技術】
環境・経済・社会・個人の統合による持続可能社会への転換
松橋 啓介
グリーンインフラ・生態系減災による気候変動適応策─人口減少時代における災害リスクの低減
一ノ瀬 友博
スマートシティと持続可能性─技術中心から人間・社会中心の持続的な都市再生へ
村山 顕人・森本 章倫
デジタルテクノロジーによってジェイン・ジェイコブズを読み替える─都市多様性のビッグデータ解析手法の提案
吉村 有司
都市システムデザインによる気候変動緩和策・適応策の検討
山形 与志樹・村山 顕人・吉田 崇紘
【編集後記】
松行 美帆子
多様な主体で取り組む川づくり─上西郷川の取り組み
林 博徳
工学の原点はコミュニケーションだ
片山 英資
この星で生きるための都市を創る─生態系と協働へ導く都市計画
土肥 真人