企画調査委員会
都市計画及び国土計画（初版、改訂版、新訂版）
工業図書（株）出版，産業図書（株）出版（改訂版，新訂版）
この一連の著書において特筆すべき点は，新版の「まえがき」に，「自分が身を以って経験したものを中心に伝えたい」と述べられているとおりに，都市計画教科書として一般的な内容を網羅している事のほか，著者自身による貴重な経験，都市計画の理論と実践に関する思想と理想の追求，卓越した著者の先見性を活かした記述が多く含まれている。昭和16年の初版は，名古屋時代の14年間と東京における７年間の実践を踏まえ，10年に余る歳月教壇で講じられたものが整理されている。昭和26年の改訂版は，著者が歴史的な東京戦災復興計画策定における重責を果し，早稲田大学教授に就任した際に出版されており，改訂の内容は著者の積み重ねられた新たな経験，時代の変化と世界における都市計画の進歩が反映されるものとなっている。序文には追記で，本書改訂に当たって，東京都技師井上孝氏の行き汎った助力を受けたと記されている。
昭和29年の新訂版は，研究生活に入って４年目に他界される１年前に出版されている。新訂の主旨を本書の序文に，今自分はよき研究室と共に，全国の都市を歩く機会に恵まれている。新しく幾つかの都市をみている中に自分の頭の中に大きな変化が起こった。それは都市計画には都市に内在する「自然」の流れに手を貸す「生態都市計画」の視点が重要であると述べられており，新訂版はその考え方によって一部が改訂されている。
紹介：明星大学名誉教授 広瀬盛行
（都市計画249号 2004年6月25日発行）