企画調査委員会

新刊探訪

入門 シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才

中野剛志 著

PHP新書/2024年

 昨今,積極財政か財政均衡かの議論が盛んに世の中を賑わしている。都市計画,とりわけ都市施設は実際に施設が実現してこそ意味があると言う側面を持っていることを考えれば,積極的に財政支出をして一刻も早く都市計画上必要とされる都市施設を建設するのか,財政の均衡を図りながら抑制的に都市施設建設を進めるのかという議論は他人ごとでは無い。
 今回,ご紹介する本書は,その意味で多様な気付きを与えてくれる都市施設建設の実務者には必読の書と言えるばかりではなく,中央政府予算に係る者にも有用な書ではないかと考える。
 著者の中野剛志氏は現職の経済産業省の官僚であり,詳細はウィキペディア等に譲るが,幅広く経済産業行政を実務として担ってきた人である。その意味で,所謂イノベーションの泰斗と目されているシュンペーターについて初心者にも解り易く書かれた本書は,正に絶好の入門書と言える。
 本書では,シュンペーター理論を平易に描き,現代資本主義を読み解く鍵として提示し,特に日本経済が「失われた30 年」に陥った原因を,シュンペーター理論と対比しながら,次のように説く。
 【現代的な視座】シュンペーター理論は現代にも極めて有効(イノベーション,貨幣,成長構造)
 【歴史的教訓】日本経済の失速は,シュンペーター理論とは逆の政策選択による結果
 【政策啓発】大企業や政府の役割を再評価し,長期的視野と資源活用の最適化がイノベーションには不可欠
 【文化・教育的提言】未来を築くのは「精力的な人」であり,その資質をどのように教育し,社会でどう育むかが問われている
 
 余談に成るが,私が東京都庁の現役時代,石原慎太郎知事(当時)が,都庁の会計制度を複式簿記に一変させた。我々技術者も複式簿記を学ばねばと自主的勉強会を立ち上げ,先ずは「グロービスMBA アカウンティング」をテキストに学び始めた。今も続いているその「学ぶ会」の今期のテキストが本書である。なお,「学ぶ会」の昨年のテキストである「MMT(現代貨幣理論)とは何か:日本を救う反緊縮理論(島倉原著)」との併読をお勧めする。

紹介:東日本旅客鉄道株式会社 技術顧問 村尾公一

(都市計画377号 2025年11月15日発行)

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