企画調査委員会

新刊探訪

協働型都市開発─国際比較による新たな潮流と展望

大村 謙二郎・有田 智一・北崎 朋希・太田 尚孝 著

近代科学社Digital/2023年

 本書は,米国,ドイツ,英国,そして日本における多様な主体間の協働を通じて推進されてきた都市開発の潮流とその手法の展開・実態を,緻密な実証分析に基づいて考察した一書である。その上で,国際的な比較の視座から,今後の我が国における協働型都市開発のあり方・可能性を展望した非常に意欲的な労作である。
 都市開発を主題とする著作は数多く刊行されてきた。しかしながら,その多くは建築的・空間的観点,あるいはエリアマネジメントの観点からの事例紹介に終始する傾向があり,現行の法制度の充実・改善を考えたい私にとっては,専門的・実践的な深みに物足りなさを禁じ得ないものであった。
 これに対し本書は,主著者である大村謙二郎先生が筑波大学に在籍されていた研究室に集った研究者諸氏が長年にわたり蓄積してきた一連の研究成果を基盤としている。それゆえ,協働型都市開発を支える都市計画法制度の構造を深く掘り下げるとともに,我が国の法制度における新たな展開の可能性にまで踏み込んで論じており,専門的知見と示唆の充実度において他の追随を許さない。私自身,これほど多くの付箋を付し,知的興奮を覚えながら通読した専門書に出会ったのは,本当に久方ぶりのことであった。
 とりわけ第一部「日本における協働型都市開発の系譜」は,バブル経済崩壊以前の1980年代から1990年代にかけての民間開発,ならびにそれを促進するために創出された都市計画的手法の背景と理論的概念を明晰に凝縮してまとめている。この点において,若手の学生諸氏,自治体の実務担当者,さらには都市開発に携わる関係者にとって,ぜひとも学んでおきたい多くの示唆に満ちた内容といえよう。
 特筆すべきは,都市開発における規制緩和と公共貢献のあり方をめぐる論考である。なかでも,海外で実践されている「域外貢献」および「資金貢献」に関する知見はきわめて示唆に富み,今後の我が国における議論の深化に多大な貢献をなすものと確信している。
 本書は,都市開発に関心を寄せるすべての人にとって,ぜひ手元に置いて読み返したい必読の一書である。

紹介:明治大学 教授 野澤千絵

(都市計画382号 2026年9月15日発行)

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