企画調査委員会

新刊探訪

追悼集 石田頼房先生が遺したもの,伝えるべきもの

石田頼房先生をしのぶ集い事務局

南風社/2016年10月

 本書は,東京都立大学で石田頼房先生から教えを受けた方々を中心とする有志が集まり,編集した追悼集であり,石田先生の業績をたどる大切なてがかりとなる一冊である。
 2編構成になっており,第1編では,石田先生の約40年間の研究活動とその意義・功績,東京都立大での大学院都市科学研究科の設立へのご尽力や研究活動,860にも及ぶ多くの執筆物から石田先生自らが選んだベスト30の論文の解説,専門分野である都市農村計画の計画概念と計画論的研究が記載され,石田先生の研究・教育への情熱と真摯な取り組みが伝わってくる。
 第2編は,東京都立大学出身の教え子を対象として38名から45編の寄稿が収録されている。寄稿は,石田先生から教えられたこと,大切だと思うことを,次世代に伝えるためにキーワードで表現し,関連する具体的なプロジェクト等を紹介し,都市計画の具体的な実践と結び付けている。各編とも先生への想いとともに,先生の教えがどのように教え子によって,実践されていったのかがよくわかり,石田先生の教育者としての功績が垣間みれる。また,先生が計画的に深くかかわれて実現した秋田県大潟村・八郎潟干拓地農村整備など4つの代表的な地区を現地踏査し,石田先生の計画理論,実現性,今後の課題を考察し,ワークショップを通して,最終的に,都市計画の実践者としての石田先生像を明らかにし,「先生は研究者であり,教育者である中で,心はつねに「現場」にあり,都市を計画する当事者として講義し,計画の歴史を検証し,発現されてきた。」とあるのは印象深い。また,都市計画の実践者である私たちが,「計画するための原則(理念)」,「実践するための手法(制度)」,「実現すべき空間(都市像)」,「中心となる主体(当事者)」を見出していくことを石田先生から教えられ,それらが循環しているサイクルを提示しているのは,今日的であり,次世代に伝えられるべきものである。
 最後に,TMU都市と住宅を考える会のホームページには,2016年10月29日(土)に明治大学駿河台キャンパス・リバティタワーで開催された石田頼房先生をしのぶ集い・追悼シンポジウムでの報告資料が掲載されている。是非,アクセスすることをお勧めしたい。

紹介:東海大学教授 梶田佳孝

(都市計画326号 2017年5月15日発行)

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