企画調査委員会

新刊探訪

都市計画の構造転換
:整・開・保からマネジメントまで

日本都市計画学会 編著

鹿島出版会/2021年3月

 本書は,都市計画法旧法制定(1919 年)から100 年,新法制定(1968 年)から50 年を記念して出版されたものである。本学会が展開してきた一連の企画のまとめとして位置づけることもできる。
 序章で100 年間の流れを概観して,石川栄耀の「都市計画の定義を明快にせよ」という命題が提示される。それに続く第1 部では,都市計画・都市計画法制の意義と歴史を,公共,都市計画技術,担い手などの視点で過去から未来を論じている。第2 部は,都市計画法制の経緯と展望を主に新法からの50 年を中心として論じるパートであり,各々の専門分野から,本書の重要なキーワードである「マネジメント」のあり方を考察している。第3 部では,今後の都市計画・都市計画法制に対する展望が示される。50 年前,100 年前から当然大きく変化してきた時代背景を振り返りつつ,新しい技術の活用なども含めた論考である。
 本書を読んで,冒頭で投げかけられた問いに対して応えて,都市計画の定義が明快になっただろうか? 複雑極まりない現代社会において,かえって混乱してしまったかもしれない。それも本書を読んだ成果であり,今後考え続けていくきっかけになったと考えたい。
 歴史を振り返るのは,単に過去のことを学ぶのではなく,未来のことを考えるためである。その意味で,本書で知る都市計画に関する100 年間の先人たちの奮闘ぶりは,今後の課題提起に十分すぎて余りある。また,様々な分野の多彩な顔ぶれが執筆しており,未来を考える手がかりを多角的に与えてくれる。今世紀に入って以来,都市計画の重要事項が都市再生特別措置法という期限付き(であるはず)の法律で決められていることは,健全な姿であろうか。その姿は50 年後,100 年後の皆さんに誇れるものであろうか。そんなことも改めて考えてみたくなる。
 ところで,本書の副題は「整・開・保からマネジメントまで」である。ここで言う「整・開・保」は新法でできた具体的な制度のことのみならず,都市計画本来の役割である「整備」「開発」「保全」を秩序立てるという広義で使われており,また末尾の「まで」を使ったのにも意味があることを知った。なかなか奥深い。

紹介:工学院大学教授 野澤康

(都市計画351号 2021年7月15日発行)

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