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高校での地理総合必修化と都市計画

はじめに

高校の社会科系教科では、2022年度から新学習指導要領より高校で「地理総合」が必修となり、その教育内容として、「持続可能な地域づくりと私たち(自然環境と防災、生活圏の調査と地域の展望)」が取り上げられています。この教育内容として「生活圏の調査と地域の展望」があり、これは主題例として「買い物弱者の問題」、「住宅団地の空洞化」等が示されているように、まちづくりの演習に近い内容となっており、この学習は今後の都市計画にも大きく影響すると思われます。

高校社会系科目の構成

高等学校教育の改善の方向性として、「知識伝達型授業から脱却し、社会で生きて働く力の育成」、「高校、大学、高大接続の一体的改革」、「『主体的・対話的で深い学び』への転換」が挙げられています。これにより社会科系新科目は、現代の諸課題の解決を視野に入れ、各科目の特性を踏まえて社会的事象を考察するように構成されています。

地理歴史科目では、1994年度以降は世界史が必修で地理は選択でしたが、2022年度以降は地理総合、歴史総合(各2単位)が必履修科目となり、さらに専門的な視野から、社会的事象等を広く深く探究する選択科目として、地理探究、日本史探究、世界史探究(各3単位)が設けられています。

高校社会系科目「地理総合」の内容

地理総合は、1単位(50分)を週2回、全70単位で、表1の内容を学ぶこととなっています。このうち「生活圏の調査と地域と展望」は、地理総合全体のまとめとして、生徒の日常的な生活圏内から課題を取り上げ、観察や調査・見学等を取り入れた授業を通じて、持続可能な地域づくりのための改善・解決策を探究するものであり、学習指導の展開例としては、表2の内容が挙げられています。

表1 地理総合の内容

 A 地図や地理情報システムで捉える現代世界
  (1) 地図や地理情報システムと現代世界
 B 国際理解と国際協力
  (1)生活文化の多様性と国際理解
  (2)地球的課題と国際協力
 C 持続可能な地域づくりと私たち
  (1) 自然環境と防災
  (2) 生活圏の調査と地域の展望

 ※高等学校学習指導要領解説 地理歴史編(平成30年7月)2)より作成


表2 生活圏の調査と地域の展望:学習指導の展開例

 1.課題の設定
  事例:なぜ空き家が多くなっているのか、どうすれば解決できるか。
 2.課題の研究
  ① 事前調査(デスクワーク)
  ② 仮説の設定と調査計画の作成
  ③ 現地調査(フィールドワーク)
  ④ 整理、分析(仮説の検証)
 3.発表
 ・調査内容の発表、討論、評価、提言
 ・取材先への報告、文化祭での発表、学校HPでの公開、地域行事等での発表や意見交換

 ※高等学校学習指導要領解説 地理歴史編(平成30年7月)2)より作成

この「生活圏の調査」の主題例としては、「買い物弱者の問題」、「住宅団地の空洞化」等まちづくりの内容が挙げられており、さらに「ここでの学習が授業の中で終結することなく、授業後の日常生活においても持続的に行われ、実社会に出ても継続的に持続可能な生活圏の在り方を考え続けることができる契機となるよう意図したものである」1)とされており、今後の都市計画分野においても、大学生の技能向上、市民の活動の活性化、合意形成の促進等への寄与が期待されます。

地理総合必修化の課題

一方で、これまで高校の地理歴史科目は、世界史が必修で地理は選択であったため、教員の新規採用は歴史専門の者が中心であり、2022年度以降地理の必修科目になっても、歴史専門の教員が担当する可能性が高く、また、地理の専門の教員も、地理学は問題発見が中心であり、問題解決は都市計画学、土木工学、建築学等の建設工学に委ねている傾向にあることなどから、地域の問題解決に関わり十分な教育を受けたとは言い難く、現場実践での課題も指摘されています。このように、指導する高校教員自身に生活圏の地理的課題解決の経験が少ないため、まちづくりや都市計画の専門家がこのような学習に対して支援する必要があると指摘されています3)


<参考資料>

1) 2019年第2回全国大会ワークショップの資料

2) 文部科学省:高等学校学習指導要領解説 地理歴史編, 2018年7月

3) 大島英幹:高等学校「地理総合」必修化がまちづくりや都市計画に与える影響, 都市計画報告集No.17, 2018年5月, pp14-17.

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